ロイヤルシティ蕓北聖湖畔(げいほくひじりこはん)リゾートが位置する広島県北広島町をはじめ、広島県北部や山陰地方の町並みを見(jiàn)ていると、獨(dú)特の赤茶色の屋根が連なっています。この瓦は島根県石見(jiàn)(いわみ)地方でつくられている『石州瓦(せきしゅうがわら)』で、愛(ài)知県三河地方の『三州瓦』、兵庫(kù)県淡路島の『淡路瓦』に並ぶ日本三大瓦のひとつです。
石州瓦は、石見(jiàn)の都野津(つのづ)層の土を原料に、出雲(yún)地方でとれる來(lái)待石(きまちいし)からなる釉薬(ゆうやく)を塗ってつくられるもので、赤茶色は高溫で焼いて生み出される來(lái)待釉薬の色です。石見(jiàn)焼をルーツに持つ石州瓦は、1,200度以上という非常に高溫で焼き上げることも特徴のひとつ。山間部は雪深く、日本海に面した町は荒波にさらされる、この地域にふさわしい非常に優(yōu)れた耐性を備えた瓦です。

赤茶色は強(qiáng)さの証。伝統(tǒng)の手法と変わらぬ原料

1806年(文化3年)創(chuàng)業(yè)の亀谷窯業(yè)は、今では浜田市で1軒となった石州瓦製造會(huì)社です。「來(lái)待をやめるなら瓦屋をやめる」と代々受け継がれる言葉があるように、來(lái)待石の釉薬にこだわり続けるのも今ではここだけといいます。
先代たちの考えを軸に、代々の職人以上のものづくりを目指す同社。一番重要な土づくりでは、7～8カ所の山から掘り出した土から手作業(yè)で石や屑を取り除いてブレンドし、3段階に分けて、土の目を徐々に細(xì)かくしていきます。そこに水を混ぜてできた粘土を、50年以上使い続けている真空プレス機(jī)に入れて瓦型に成形。それを約ひと月かけて自然乾燥させた後、釉薬を手掛けし、再び乾燥させ、焼成していきます。石州瓦の焼成溫度は1,200度から1,300度が標(biāo)準(zhǔn)ですが、亀谷窯業(yè)では最後の2時(shí)間強(qiáng)は連続して1,350度での焼成が基本。來(lái)待石釉薬のあの色も、この高溫?zé)喅嗓扦胜堡欷斜憩F(xiàn)できないといいます。

受け継ぐべきものを受け継ぎ、前例にとらわれない

シャトル窯の中で、場(chǎng)所によって溫度差が出ないように酸素を送り、窯の中の溫度を調(diào)整。火の色が無(wú)色なら1,300度に達(dá)している証拠です。同社9代目の亀谷典生さんが「瓦の粘土や釉薬に含まれる酸化鉄(FeO)を鉄(Fe)になるまで、しっかりと焼き締めます」と語(yǔ)るように、高溫で焼き締めることで凍害にも塩害にも負(fù)けない強(qiáng)さと美しさを持つ石州瓦ができあがります。
今の瓦は平板なものがスタンダードですが、亀谷窯業(yè)でつくられる瓦は昔ながらの和型のみ。瓦にも軽さが求められる中で、一枚でもずっしりと重みがあるのは、木造軸組構(gòu)法の安全性をもたらす『太い柱』『強(qiáng)靭な骨組』『重みのある瓦』のバランスを考えてのこと。「屋根がダメだと、家が全部ダメになる」という先代の言葉が生きています。

(寫(xiě)真左上／右上)瓦食器、土鍋(直火用耐熱瓦)
(寫(xiě)真左下／右下)家紋のペーパー ウェイト、鬼師が手がける鬼瓦。すべて手作業(yè)なので、いろんなリクエストに応えられる。使い手の聲を聞きながらより良いものづくりを目指している

地元では當(dāng)たり前の光景となっている石州瓦の町並みですが、當(dāng)たり前すぎるがゆえに、石州瓦の良さが現(xiàn)代の人々に伝わっていないと亀谷さんは言います。そこで近年は、石州瓦の材料や製法、技術(shù)を用いて直火で使える器や土鍋、耐久性の高いタイルづくりなどにも著手。研究開(kāi)発に3年費(fèi)やした土鍋は、漏れ止めをせずに使い続けることができ、大手リゾートホテルや料理店でも採(cǎi)用されています。また、ザ?リッツ?カールトン東京では同社の棒タイルが壁に施工され、デンマークやオーストラリアにもタイルの輸出が始まっています。

亀谷窯業(yè)では、山陰地方に殘る伝統(tǒng)的建造物の改修や復(fù)元も手掛けています。狀態(tài)が良ければ、當(dāng)時(shí)の瓦を降ろして洗い直して葺き直すほか、登り窯で焼いていた當(dāng)時(shí)の風(fēng)合いを表現(xiàn)するために、釉薬の調(diào)合で光沢を抑え、錆を帯びているような渋い風(fēng)合いを出した「サビ瓦」を製造。このサビ瓦は歴史的な建物だけでなく、古民家風(fēng)の新築にも好んで使われています。
石州瓦は一度葺けば、次の代までその鮮やかな風(fēng)合いのまま殘ります。同社近くの長(zhǎng)澤神社では、80年ほど前につくられた亀谷窯業(yè)の瓦が今も健在。遠(yuǎn)く北海道江差町の北海道本願(yuàn)寺派江差別院庫(kù)裏でも、1880年(明治13年)に北前船で運(yùn)ばれた亀谷の瓦が生きているといいます。

代表取締役社長(zhǎng)の亀谷典生さんは9代目。昔ならご法度だった淡路瓦とのコラボレーションなど、広く日本の瓦の良さに注目してもらうために、前例にない取り組みにも積極的にチャレンジしています。「なぜこの土を？ なぜこの形を？そこを考えながら先代、祖先以上のものをつくらないと復(fù)元ではないと思っています。その時(shí)につくった人たちがなにを考え、どういうふうにつくったのかということまで考えていかないと「なんちゃって」で終わってしまう。赤い屋根の風(fēng)景を殘そう、ではなく、強(qiáng)くて頑丈な、良いものを次の世代に殘すのが、私たちがやるべきことだと思っています」