前回は「住宅ストック?産業(yè)」の視點から目標(biāo)7「空き家の管理?除卻?利活用」を中心に、住宅というモノの視點、ハード面から住宅政策を確認(rèn)しました。具體的に空き家対策は市町村が対応するため、人口減少社會における土地活用は、今まで以上に行政の街づくり計畫の影響を大きく受けることになります。適切な情報収集を行っていきましょう。
今回は「住宅ストック?産業(yè)」の視點から目標(biāo)6「脫炭素社會に向けた住宅循環(huán)システムの構(gòu)築と良質(zhì)な住宅ストックの形成」を見ていきたいと思います。

図1：「住宅ストック?産業(yè)」の視點

出典：國土交通省「新たな住生活基本計畫の概要」

セオリーの変化に乗り遅れると、間違えるべくして間違える！？

以前ある先輩から「セオリー通りに考えて行動すれば、9割方間違えることはない！」「なぜ、君はセオリー通り、行動しないんだ！」と何度も叱責(zé)を受けたことがありました。
私は一歩先読みする考え方や行動をすることが大好きですが、もちろん、変わらないセオリーも存在しますから、それも大事にしています。しかし、世の中には変わらないものの方が少ないと思います。しかも、このコロナ禍により、さまざまな変化が顕在化し、スピードも速まったように感じています。
実際、ここ數(shù)年、その先輩の業(yè)績や表情が暗いのも事実です。

なぜ、そうなっているのでしょうか？これは私の考えですが、セオリーとは、過去の成功事例や経験則の積み重ねです。ですから、過去にないような環(huán)境の変化が起これば、當(dāng)然、成功に関する基準(zhǔn)やルール（法則）は変化します。過去の成功に基づいたセオリーに固執(zhí)しすぎると、逆に間違ってしまう原因になりかねません。
つまり、現(xiàn)在のような時代の節(jié)目では、「間違えるべくして間違えてしまう」ということが度々起きます。
土地活用は長期投資なので、普遍的な基準(zhǔn)を上手に活かしながら、変わりそうな基準(zhǔn)については変化のタイミングを想定し、先読み＝先回りすることが大切です。
今回の「環(huán)境問題～カーボンニュートラルへの対応」も、まさに時代の節(jié)目により誕生した比較 的新しい基準(zhǔn)ではないでしょうか。

そもそも、カーボンニュートラルって？

カーボンニュートラルとは、環(huán)境省「溫室効果ガス排出?吸収量等の算定と報告」溫室効果ガスインベントリの概要を參照にお伝えすると、一言でいえば「溫室効果ガス」の排出を「ニュートラル」＝0（ゼロ）にするということです。

なぜ、このような対応が必要になったかというと、20世紀(jì)半ば以降、世界の平均気溫は上昇し続け、地球が溫暖化しており、そのことで災(zāi)害が激甚化するなど人類にとって悪影響が出ているとされ、この原因が18世紀(jì)後半の産業(yè)革命以降、大量の化石燃料を消費(fèi)し、二酸化炭素（CO2）、メタン、N2O（一酸化二窒素）、フロンガスなどのいわゆる「溫室効果ガス」が排出され、大気中の溫室効果ガスの濃度が急激に上昇したことであると考えられているからです。そこで、次のような目標(biāo)が掲げられました。

• 2015年にパリ協(xié)定が採択され、産業(yè)革命以降の気溫上昇を2℃ないし1.5℃に抑制することが長期目標(biāo)として掲げられ、行動が促されている

1990年代に地球溫暖化防止についての枠組みを規(guī)定した気候変動?xùn)樈M條約（United Nations Framework Convention on Climate Change: UNFCCC）により、1年間に排出?吸収する溫室効果ガスの量を「溫室効果ガスインベントリ（Greenhouse GasInventory）」として國ごとで取りまとめ、直近年の溫室効果ガス排出?吸収量を推計?公表するとともに、これらのデータを條約事務(wù)局に提出する義務(wù)を課せられています。

政府の対応

実際に、この「環(huán)境問題～カーボンニュートラルへの対応」が早まったのは、以下の理由があります。

• ?2018年10月のIPCC（気候変動に関する政府間パネル）特別報告書で、將來の平均気溫上昇が1.5℃を大きく超えないようにするためには、2050年前後に世界の二酸化炭素排出量が正味ゼロとなっていることが必要であるとの見解が示された。
• ?2021年8月の報告書では、気溫上昇を1.5℃に抑えることで10年に一度の豪雨等の頻度を低くし得るとの見解が示されました。事実、國土交通省の資料によると、2018年7月豪雨の総降水量は気候変動により約6.5％増と試算され、気候変動の影響が既に顕在化していることが明らかであると指摘されています。

そしてそのような中、菅首相（當(dāng)時）が2020年10月26日の所信表明演説で「2050年にカーボンニュートラル、脫炭素社會の実現(xiàn)を目指す」ことを宣言し、2021年4月22日には「2030年度に、溫室効果ガスを2013年度から46％削減することを目指す。さらに、50％の高みに向けて、挑戦を続けていく」ことが表明されました。

住生活基本計畫に明記され、土地活用に影響のありそうな施策

住生活基本計畫に明記され、土地活用に影響のありそうな施策は以下の通りです。

• ○住宅の省エネルギー基準(zhǔn)の義務(wù)づけや省エネルギー性能表示に関する規(guī)制など更なる規(guī)制の強(qiáng)化
• ○炭素貯蔵効果の高い木造住宅等の普及や、中高層住宅等の木造化等により、まちにおける炭素の貯蔵の促進(jìn)
• ○住宅事業(yè)者の省エネルギー性能向上に係る取り組み狀況の情報を集約し、消費(fèi)者等に分かりやすく公表する仕組みの構(gòu)築

脫炭素社會に向けた目標(biāo)6によれば、2050年のカーボンニュートラルに向け、ここ10年程度で環(huán)境対策を意識した新しい基準(zhǔn)が確実に生まれ、指標(biāo)化&義務(wù)化されそうです。

住宅?建築物を取り巻く環(huán)境と2050年カーボンニュートラルの実現(xiàn)に向けた基本的な考え方

このような狀況下、國土交通省、経済産業(yè)省及び環(huán)境省の三省は、2021年4月に「脫炭素社會に向けた住宅?建築物の省エネ対策等のあり方検討會」を立ち上げ、2021年8月23日に「脫炭素社會に向けた住宅?建築物における省エネ対策等のあり方?進(jìn)め方」という報告書をとりまとめ、公表しました。
この報告內(nèi)容が、今後の政策のベースになります。

表1：脫炭素社會に向けた住宅?建築物における省エネ対策等のあり方?進(jìn)め方の概要

1. 2050年カーボンニュートラルの実現(xiàn)に向けた取り組みの進(jìn)め方
2. I．家庭?業(yè)務(wù)部門（住宅?建築物における省エネ対策の強(qiáng)化）
3. （1）省エネ性能の底上げ（ボトムアップ）
   ?住宅を含む省エネ基準(zhǔn)への適合義務(wù)化〈2025年度〉
   ?斷熱施工に関する実地訓(xùn)練を含む未習(xí)熟な事業(yè)者の技術(shù)力向上の支援
   ?新築に対する支援措置について省エネ基準(zhǔn)適合の要件化
   （2）の取り組みを経て
   ?義務(wù)化が先行している大規(guī)模建築物から省エネ基準(zhǔn)を段階的に引き上げ
   ?遅くとも2030年までに、誘導(dǎo)基準(zhǔn)への適合率が８割を超えた時點で、義務(wù)化
   された省エネ基準(zhǔn)をZEH?ZEB基準(zhǔn)の水準(zhǔn)の省エネ性能（※）に引き上げ
   　※住宅：強(qiáng)化外皮基準(zhǔn)＋一次エネルギー消費(fèi)量▲20％
   　建築物：用途に応じ、一次エネルギー消費(fèi)量▲30％又は40％（小規(guī)模は20％）
4. （2）省エネ性能のボリュームゾーンのレベルアップ
   ?建築物省エネ法に基づく誘導(dǎo)基準(zhǔn)や長期優(yōu)良住宅、低炭素建築物等の認(rèn)定基準(zhǔn)をZEH?ZEB基準(zhǔn)の水準(zhǔn)の省エネ性能に引き上げ、整合させる
   ?國?地方自治體等の新築建築物?住宅について誘導(dǎo)基準(zhǔn)の原則化
   ?ZEH、ZEB等に対する支援を継続?充実
   ?住宅トップランナー制度の充実?強(qiáng)化（分譲マンションの追加、トップランナー基準(zhǔn)をZEH相當(dāng)の省エネ性能に引き上げ）
5. （3）より高い省エネ性能を?qū)g現(xiàn)するトップアップの取り組み
   ?ZEH＋やLCCM住宅などの取り組みの促進(jìn)
   ?住宅性能表示制度の上位等級として多段階の斷熱性能を設(shè)定
6. （4）機(jī)器?建材トップランナー制度の強(qiáng)化等による機(jī)器?建材の性能向上
7. （5）省エネ性能表示の取り組み
   ?新築住宅?建築物の販売?賃貸の広告等における省エネ性能表示の義務(wù)付けを目指し、既存ストックは表示?情報提供方法を検討?試行
8. （6）既存ストック対策としての省エネ改修のあり方?進(jìn)め方
   ?國?地方自治體等の建築物?住宅の計畫的な省エネ改修の促進(jìn)
   ?耐震改修と合わせた省エネ改修の促進(jìn)や建替えの誘導(dǎo)
   ?窓改修や部分?jǐn)酂岣男薜趣问ˉē透男蓼未龠M(jìn)
   ?地方自治體と連攜した省エネ改修に対する支援を継続?拡充等

1. II．エネルギー転換部門（再生可能エネルギーの導(dǎo)入拡大）
   太陽光発電や太陽熱?地中熱の利用、バイオマスの活用など、地域の実情に応 じた再生可能エネルギーや未利用エネルギーの利用拡大を図ることが重要
2. （1）太陽光発電の活用
   ? 太陽光発電設(shè)備の設(shè)置については、その設(shè)置義務(wù)化に対する課題の指摘もあったが、導(dǎo)入拡大の必要性については共通認(rèn)識
   ? 將來における太陽光発電設(shè)備の設(shè)置義務(wù)化も選択肢の1つとしてあらゆる手段を検討し、その設(shè)置促進(jìn)のための取り組みを進(jìn)める
   ?國や地方自治體の率先した取り組み（新築における標(biāo)準(zhǔn)化等）
   ?関係省庁?関係業(yè)界が連攜した適切な情報発信?周知、再生可能エネルギー利用設(shè)備の設(shè)置に関する建築主への情報伝達(dá)の仕組みの構(gòu)築
   ?ZEH?ZEB等への補(bǔ)助の継続?充実、特にZEH等への融資?稅制の支援
   ?低炭素建築物の認(rèn)定基準(zhǔn)の見直し（再エネ導(dǎo)入ZEH?ZEBの要件化）
   ?消費(fèi)者や事業(yè)主が安心できるＰＰＡモデルの定著
   ?脫炭素先行地域づくり等への支援によるモデル地域の実現(xiàn)。そうした取り組み狀況も踏まえ、地域?立地條件の差異等を勘案しつつ、制度的な対応のあり方も含め必要な対応を検討
   ?技術(shù)開発と蓄電池も含めた一層の低コスト化
3. （2）その他の再生可能エネルギー?未利用エネルギーの活用や面的な取り組み
   ?給湯消費(fèi)エネルギーの低減が期待される太陽熱利用設(shè)備等の利用拡大
   ?複數(shù)棟の住宅?建築物による電気?熱エネルギーの面的な利用?融通等の取り組みの促進(jìn)
   ?変動型再生可能エネルギーの増加に対応した系統(tǒng)の安定維持等の対策

1. III．吸収源対策（木材の利用拡大）
2. ?木造建築物等に関する建築基準(zhǔn)の更なる合理化
   ?公共建築物における率先した木造化?木質(zhì)化の取り組み
   ?民間の非住宅建築物や中高層住宅における木造化の推進(jìn)
   ?木材の安定的な確保の実現(xiàn)に向けた體制整備の推進(jìn)に対する支援
   ?地域材活用の炭素削減効果を評価可能なLCCM住宅?建築物の普及拡大

出典：國土交通省　脫炭素社會に向けた住宅?建築物の省エネ対策等のあり方検討會「脫炭素社會に向けた住宅?建築物における省エネ対策等のあり方?進(jìn)め方」概要（2021年8月）

同報告書によると、2030年及び2050年に目指すべき住宅?建築物の姿?あり方?として「省エネ性能の確保?向上による省エネルギーの徹底と再生可能エネルギーの導(dǎo)入拡大」を基本とすると示しています。
具體的には、2030年までに誘導(dǎo)基準(zhǔn)への適合率が8割を超えた時點では、（1）新築ベースで「強(qiáng)化外皮基準(zhǔn)及び再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費(fèi)量を現(xiàn)行の省エネ基準(zhǔn)値から20％削減、建築物については用途に応じて30～40％削減（小規(guī)模は20％）」というZEH?ZEB基準(zhǔn)の『省エネ性能』、（2）「新築戸建住宅の6割において太陽光発電設(shè)備が導(dǎo)入される」という『再エネ狀態(tài)』の2つを備えるという目標(biāo)が示されています。

また、2050年時點では、（1）ストック平均で「一次エネルギーの平均消費(fèi)量を省エネ基準(zhǔn)から 20％程度削減、建築物については用途に応じて30％又は40％程度削減」というZEH?ZEB基準(zhǔn) の『省エネ性能』、（2）「導(dǎo)入が合理的な住宅?建築物における太陽光発電設(shè)備等の再生可能 エネルギー導(dǎo)入が一般的」になるという『再エネ狀態(tài)』を備えるという2つの目標(biāo)が示されています。

今後、関係各省で、具體化に向けて取り組まれていくそうですが、前述の報告書とともに公表 されたタイムテーブルを見ると、さまざまな規(guī)制が確実に拡大?強(qiáng)化されていく予定です。

「（參考）脫炭素社會に向けた住宅?建築物における省エネ対策等のあり方?進(jìn)め方に関するロードマップ（2021.8）」

出典：國土交通省　脫炭素社會に向けた住宅?建築物の省エネ対策等のあり方検討會「脫炭素社會に向けた住宅?建築物における省エネ対策等のあり方?進(jìn)め方に関するロードマップ」（2021年8月）

まとめ　～私たちができること

間違えず、時代に乗り遅れないためには、現(xiàn)在の最低基準(zhǔn)に合わせるのではなく、時流で変化する基準(zhǔn)から、それぞれの狀況に合わせて賢く適宜対応していくことが大切です。

• ○2050年カーボンニュートラルの実現(xiàn)に向けて、省エネルギー性能を一層向上しつつ、長壽命でライフサイクルCO2排出量が少ない長期優(yōu)良住宅ストックやZEHストックを拡充し、ライフサイクルでCO2排出量をマイナスにするLCCM（ライフサイクルカーボンマイナス）住宅の評価と普及を推進(jìn)するとともに、住宅の省エネルギー基準(zhǔn)の義務(wù)づけや省エネルギー性能表示に関する規(guī)制など更なる規(guī)制の強(qiáng)化
• ○炭素貯蔵効果の高い木造住宅等の普及や、CLT（直交集成板）等を活用した中高層住宅等の木造化等により、まちにおける炭素の貯蔵の促進(jìn)
• ○住宅事業(yè)者の省エネルギー性能向上に係る取り組み狀況の情報を集約し、消費(fèi)者等に分かりやすく公表する仕組みの構(gòu)築。高い省エネルギー性能や、CO2排出量、長期優(yōu)良性、既存宅地を重視して、住宅取得を推進(jìn)

出典：國土交通省「新たな住生活基本計畫の概要」

上記、「新たな住生活基本計畫の概要目標(biāo)6」に記載されている內(nèi)容については、確実に実施されるものと理解し、このような環(huán)境変化への対応も事業(yè)計畫に加味していきましょう。
対応方法には、目に見えるがお金がかかる「ハード面」の対応と、目に見えづらいが経験値が上がりノウハウとなる「ソフト」面の対応があります。
特に、ハード面は技術(shù)革新が進(jìn)行中で、基準(zhǔn)自體もより厳しいレベルに変更されそうですから、 大きな投資をするには難しい局面です。例えば、修繕やリフォームをするにしてもどの程度まで対応するのか、収支バランスも意識してしっかり考えた上で、適宜対応する必要があります。

新しい基準(zhǔn)が創(chuàng)造されているときには、変化することもあり得ますから、まずは、ノウハウや技術(shù)対応が先行している大手業(yè)者さんとしっかり関係性を持って、情報収集に努めましょう。