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2024年3月にリニューアルしました。
連載:未來の旅人
2024.07.31
2021年、東京パラリンピック開催をきっかけに、一気に身近になったパラスポーツ。メディアでもさまざまな競(jìng)技が中継され、楽しみに観ていた人も多かったのではないでしょうか。
パラスポーツの中で、先天的な理由や何らかの事情で足を失ったパラアスリートが使用するのが競(jìng)技用義足です。そして、競(jìng)技用義足の開発とトップパラアスリートの育成?強(qiáng)化、加えて競(jìng)技用義足の一般への普及に努めてきたのが、株式會(huì)社Xiborg(サイボーグ)の代表取締役で、義足エンジニアの遠(yuǎn)藤謙さんです。
「誰もが走れる社會(huì)の実現(xiàn)」と「"義足で人類最速"の達(dá)成」を目指す遠(yuǎn)藤さんが、その先に描く「多様で、公平で、包括的な社會(huì)づくり」とは——。
現(xiàn)在の男子陸上100mの世界記録は、ウサイン?ボルトの9秒58。一方、義足ランナーの男子陸上100mの世界記録は、ヨハネス?フロアスの10秒54と、すでにその差は1秒まで迫っています。
「今後、テクノロジーの進(jìn)化やパラアスリートの努力によって、健常者よりも足が速くなる未來が必ず來ます。その先に待っているのは、社會(huì)の価値観の大きな転換です」と、遠(yuǎn)藤さんは話します。
遠(yuǎn)藤さんが指摘する"価値観の転換"。それは「障がい者」が速く走れること以上の可能性を秘めています。
「一つの物事の発明によって、人間の生活や考え方を大きく変えた例は多くありますよね。義足でいえば、それまでは障がい者と言われて、健常者よりも身體能力の面で劣るとされていた人たちが、競(jìng)技用義足によって速く走れるようになる。すると『障がい者はこうだよね』という、既存の概念や価値観がガラッと変わると思います」。
寫真提供:Xiborg
もともとヒューマノイドロボットの研究をしていた遠(yuǎn)藤さんは、高校のバスケットボール部の後輩が骨肉腫となって下肢切斷したことをきっかけに、ロボットと義足の技術(shù)を結(jié)びつける研究をしたいと、アメリカのマサチューセッツ工科大學(xué)(MIT)に留學(xué)しました。そこで、義足でありながらオリンピックに出場(chǎng)しようとしているパラアスリートの存在を知ります。
「彼が競(jìng)技用義足で走る姿がめちゃくちゃかっこよくて、衝撃を受けたんです。足がない人がかっこよく走るということを、僕はそれまでまったく想像していなかった。と同時(shí)に、いずれは健常者よりも速く走れるのではないか、とも感じたんです」。
競(jìng)技用義足の可能性に魅せられた遠(yuǎn)藤さんは、2012年に帰國(guó)後、共通の知人を介して、元陸上選手の為末大さんと出會(huì)います。意気投合したふたりは、2014年5月、株式會(huì)社Xiborgを創(chuàng)業(yè)。為末さんの盡力もあり、義足製作にあたり3名のパラアスリートが協(xié)力を申し出てくれました。
ところが、最初につくったプロトタイプは柔らかすぎて「これでは走れない」と言われてしまいます。遠(yuǎn)藤さんは、大手素材メーカーである東レの協(xié)力を取り付け、競(jìng)技用義足の素材であるカーボンとその成型技術(shù)について、一から勉強(qiáng)しました。2014年から6回ほどの試作を繰り返し、2年後の2016年3月、パラリンピックで使用できる競(jìng)技用義足「Xiborg Genesis」がようやく完成。ひとつの義足の重さは2kgほどで、見た目の重厚さとは違い、片手でひょいと持ち上げられる軽さに仕上がりました。その後もデータ解析や研究を重ね、2018年には「Xiborg Genesis」の後継モデル「Xiborg ν」が完成しました。
Xiborgに所屬する4名の走りの解析結(jié)果から生まれた、トップアスリート向けのスポーツ用義足「Xiborg ν」/寫真提供:Xiborg
「足の欠損位置は人によって違うので、一般的な競(jìng)技用義足では高さの調(diào)整が必要になります。そのため、ブレードは上部からまっすぐに下に伸ばし、途中で橫に灣曲させる形をとります。ですがXiborgは、選手一人ひとりに合わせてオーダーメイドで義足を製作するため、高さの調(diào)節(jié)が不要で、ブレードの上部から直接的に灣曲をつくることが可能です。すると使用するカーボンの量も減り、さらに軽くすることができる。重心も上に移動(dòng)するため、扱いやすく跳ねやすい義足になるんです」。
一人ひとりに合わせてつくるからこそ、最良の形狀を追求できる。競(jìng)技用義足のあり方としては理想的ですが、事業(yè)として成立させるのは難しいという側(cè)面もあります。
「義足メーカーとして事業(yè)拡大するには、市場(chǎng)の中で売れるものをつくって、営業(yè)や展示會(huì)などの販売促進(jìn)をする必要があります。ですが、僕がやりたいのは研究やn=1のものづくり。経営やビジネスをしてしまったら、事業(yè)は続けられないと思いました。だからあえて、事業(yè)拡大を諦めたんです」。
スケールはせずに、「誰もが走れる社會(huì)の実現(xiàn)」と「"義足で人類最速"の達(dá)成」をするためには——。遠(yuǎn)藤さんが目指したのは「F1レーシングのチーム」でした。研究開発型で、數(shù)名のアスリートや義肢裝具士と、小規(guī)模なチームで一緒に義足をつくっていく。そして活動(dòng)に共感してくれる企業(yè)にスポンサーになってもらう。小さな規(guī)模であれば、"共感"によって事業(yè)を確立することはできると考えました。
Xiborgの創(chuàng)業(yè)から10年、さまざまな人々の共感を得て、著実に成果を上げてきました。まもなく開催されるパリ2024パラリンピックでは、出場(chǎng)する3選手の競(jìng)技用義足の開発をしています。しかしパラリンピックが注目を集める反面、課題も見えてきました。
「パラスポーツはまだ市場(chǎng)が小さく、スポーツにおける普及?育成?強(qiáng)化の『強(qiáng)化』の部分だけが注目されています。もちろん強(qiáng)化は大切ですが、トップアスリートだけが頑張るものでは広がりが生まれません」。
そこで遠(yuǎn)藤さんは、競(jìng)技人口を増やすべく、子どもたちに競(jìng)技用義足で走る體験を提供する「ギソクの図書館」やランイベントを?qū)g施しています。また、ラオスやブータン、フィリピン、シエラレオネなどの競(jìng)技用義足が浸透していない國(guó)に赴き、パラアスリートの義足製作サポートや普及活動(dòng)にも取り組んでいます。
誰でもスポーツ用義足を體験できる「ギソクの図書館」(現(xiàn)在屋內(nèi)トラック施設(shè)「新豊洲Brilliaランニングスタジアム」は改修中。今秋に移転しリニューアルオープン予定)/寫真提供:Xiborg
渋谷のど真ん中、ファイヤー通りにトラックをつくり開催されたストリートレース。世界トップクラスのパラアスリートが集結(jié)し、「人類最速記録更新」に挑戦しました。渋谷を行き交う多くの人たちの注目を集めたのは、言うまでもありません/寫真提供:Xiborg
「日本でも、パラスポーツは一部の特別な人のもの、という認(rèn)識(shí)が根強(qiáng)いです。また発展途上國(guó)では、障がい者がスポーツを楽しむこと自體、ハードルがすごく高い。実際、パラスポーツの選手はアメリカやヨーロッパなど、裕福な先進(jìn)國(guó)の選手がほとんどです。逆に言うと、アジア諸國(guó)やメダル常連國(guó)であるアフリカでパラスポーツが當(dāng)たり前になれば、記録はさらに伸びていくと思いますよ」。
今年訪れた、アフリカのシエラレオネでの寫真/寫真提供:Xiborg
実際、ギソクの図書館やイベントを介して走る楽しさを知った子どもたちの中には、陸上競(jìng)技の世界に足を踏み入れた子もいます。また、2024年5月に神戸で開催された世界パラ陸上競(jìng)技選手権大會(huì)では、Xiborgがサポートしたタイの選手が100mで6位入賞を果たしました。
「誰もが走れる社會(huì)の実現(xiàn)」と「義足で人類最速」というふたつの目標(biāo)は両輪であり、まったく違うようで密接なつながりがあるのです。
「もちろん、みんなにパラアスリートになってほしいわけではありません。本來、スポーツはそこまで身構(gòu)えることなく、楽しみながらすればいいもの。スポーツを気軽に楽しむ中で自然と競(jìng)技人口が増え、高みを目指すトップアスリートが生まれて競(jìng)技レベルが高まっていく。これが健全なプロセスではないでしょうか」。
ふたつの目標(biāo)を両輪で回していくためにも、遠(yuǎn)藤さんは現(xiàn)在、陸上100mにおける世界記録をパラアスリートが塗り替えることを目指しています。
「みなさん、ウサイン?ボルトは知っていますよね。では、ウェイド?バンニーキルクはご存じですか。バンニーキルクは男子陸上400mの世界記録保持者です。多くの人がボルトは知っていてもバンニーキルクは知らない。バンニーキルクもウサイン?ボルトに並ぶくらい本當(dāng)に素晴らしいアスリートです。ただ一方で、多くの人が注目する陸上競(jìng)技の花形は、やっぱり100mになってしまうのです。その100m走でパラアスリートが健常者の記録を抜くことの社會(huì)的インパクトは大きい。実現(xiàn)したら、社會(huì)が変わるトリガーにもなり得ると思っています」。
トリガーが引かれたとき、社會(huì)はどのように変わるのでしょうか。
「"障がい者なのに頑張っていてすごい"とか、"義足だから速い"や"最新のテクノロジーを駆使してずるい"といった、今ある見方や議論がなくなると思います。視力が悪い人が、メガネというデバイスをかけてコンプレックスがなくなるように、義足ランナーが人類最速を達(dá)成することで、コンプレックスは解消される。むしろ、彼らのことを障がい者とは思わない感覚が社會(huì)に生まれるのではないかと思います」。
パラスポーツが「障がい者のスポーツ」ではなく、エンターテイメント性あふれる「スポーツ競(jìng)技のひとつ」となった瞬間、既存の価値観は大転換を起こし「多様で、公平で、包括的な社會(huì)」が実現(xiàn)されていく。そんな未來に向けて、遠(yuǎn)藤さんの挑戦は続きます。

1978年生まれ。慶應(yīng)義塾大學(xué)修士課程修了後、渡米。マサチューセッツ工科大學(xué)(MIT)メディアラボにて博士取得。ロボット技術(shù)を用いた身體能力の拡張に関する研究や途上國(guó)向けの義肢開発に攜わる。 2014年に為末大氏らとともに株式會(huì)社Xiborgを創(chuàng)業(yè)し、代表取締役に就任。競(jìng)技用義足の開発を開始する。現(xiàn)在、ソニーコンピュータサイエンス研究所の上級(jí)研究員。2012年には、MITが出版する科學(xué)雑誌『Technology Review』が選ぶ「35歳以下のイノベーター35人(TR35)」に選出されている。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現(xiàn)に向け、様々な取り組みを進(jìn)めていきます。

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