- Vol.1 鞍型屋根の家
(インドネシア) - Vol.2 雪の家、イグルー
(カナダ北部) - Vol.3 とんがり屋根の石の家
(南イタリア) - Vol.4 風(fēng)の塔の家
(イラン中部) - Vol.5 土の中の家、ヤオトン
(中國(guó)) - Vol.6 移動(dòng)できる家、ゲル
(モンゴル) - Vol.7 洞窟の家、カッパドキア
(トルコ) - Vol.8 床暖房と板の間のある家
(韓國(guó)) - Vol.9 ピグミーの森の家
(コンゴ) - Vol.10 海に浮かぶ家
(フィリピン) - Vol.11 世界最古の摩天樓都市
(イエメン) - Vol.12 小さくて暖かい木の家
(ルーマニア) - Vol.13 中庭のある家
(アルジェリア?インベルベル)
Vol.4 風(fēng)の塔の家(イラン中部)


イラン?中央部の気候と特徴
西アジアにあるイラン。その國(guó)土の東半分には、人がほとんど住んでいない砂漠地帯が広がっています。西半分はいくつかの山脈が連なる山の多い地域。人口のほとんどがその地域に集中しています。國(guó)土の大部分は年間の降水量が少ない砂漠気候、ステップ気候に屬しています。
イランの中央部に位置するヤズドは、中國(guó)と地中海を結(jié)ぶシルクロードの交易で古くから栄えてきた都市です。周囲にはキャヴィール砂漠とルート砂漠があり、非常に乾燥しています。夏は日中40℃近くまで気溫が上がる一方、冬は-20℃を記録するなど、夏と冬の気溫の差が大きいのが特徴です。
雨は冬から春にかけて降りますが、年間の降水量はわずか20~100mmしかありません。生活に必要な水を確保するため、南西にあるザグロス山脈からカナートという地下水路をつくって水をひいています。ヤズドの街は、このカナートに沿って建物がつくられ、発展した都市です。
ヤズドの住民の多くがイスラム教徒です。イスラムの戒律(かいりつ?守るべき規(guī)則のこと)は女性が家族以外の男性に髪の毛や體のシルエットを見(jiàn)せることを禁じています。そのため、女性が外出したり來(lái)客に會(huì)うときには、チャドルと呼ばれる、ゆったりとした黒い衣服を身につけています。
風(fēng)の塔の家の特徴

イラン中部?カーシャン地方の家
ヤズドの住宅地を歩くと、家と家の間に、土色の高い壁に囲まれた細(xì)い道路が通っています。道に立って上を見(jiàn)上げると、両側(cè)の壁をつなぐように所々、土のアーチがかかっています。これは両側(cè)の土の壁同士を支える役目をしています。土色の壁には木の扉がついていて、それが家の玄関口になります。
玄関を入ると、「ダルガー」と呼ばれる來(lái)客に応対するための空間があります。そのダルガーの先は、「ハシティ」という八角形の小さな部屋。1つの共有玄関の先に親類や兄弟の家族が住む別々の家がある構(gòu)造の家も多く、このハシティからそれぞれの家やいろいろな部屋へ行き來(lái)できるようになっています。
ハシティから続く廊下は「ダラン」といい、それを抜けると、中庭があります。家は中庭を中心につくられていて、中庭の周りをぐるりと取り囲むように、いくつかの部屋が設(shè)けられています。中庭に面した各部屋の窓は一定の大きさでつくられているため、整然とした規(guī)則正しいリズムの印象を與えます。また、窓の數(shù)でその部屋の大きさもわかります。部屋は中庭よりも約1m高い場(chǎng)所になっていて、中庭に対して左右対稱に配置されています。床にはカーペットがしかれ、床に座って生活しています。食事や家族との団らん、寢るのもすべて同じ部屋を使いますが、「女性専用の部屋」と「男性専用の部屋」というようにはっきりと區(qū)別されています。

風(fēng)の塔の間取り(一例)
夏と冬で部屋を住み分ける

中庭には、ザクロやイチジクなどの樹(shù)木がたくさん植えられ、緑の多い空間になっています。夏の厳しい日差しを、樹(shù)木がさえぎり、木陰が家の中の暑さをふせいでくれます。また、涼しさを運(yùn)んできてくれる池も設(shè)けられています。
中庭の南側(cè)は「タラール」と呼ばれる半屋外の部屋があります。直射日光が當(dāng)たらず、暑さをしのげるため、夏に過(guò)ごす部屋や、お祭りの行事を行う場(chǎng)としても使われます。一方、中庭の北側(cè)の部屋はおもに冬用の部屋。このように季節(jié)によって部屋を住み分けることで、1年間の気候変化の中で快適に暮らす工夫をしています。
上空の涼しい風(fēng)を家の中に取りこむ「風(fēng)の塔」

中庭の南側(cè)にある夏の部屋「タラール」の上には、「バードギール」と呼ばれる煙突のような高い塔が建てられています。これは上空の涼しい風(fēng)を家の中に取り込むための「風(fēng)の塔」。バードギールから取り込まれた風(fēng)はタラール、そして中庭を通って各部屋へと吹き抜けます。バードギールは、自然の風(fēng)をうまく家の中に取り込む天然の空調(diào)設(shè)備なのです。ヤズドの街を見(jiàn)渡すと、日ぼしレンガの建築物が建ち並ぶ中に、いくつものバードギールを見(jiàn)つけることができます。暑く、乾燥した厳しい気候に建つ風(fēng)の塔の家は、自然の力を上手に利用した究極のエコハウスといえるでしょう。
POINT
- クーラーを使わなくても、風(fēng)をうまく家の中に取り込んで家中が涼しくなるのね。
- 夏と冬とで使う部屋が違うなんておもしろいな。
- 中庭にある樹(shù)木や池も、涼しさに役立っているんだね。

參考文獻(xiàn):森田一彌「風(fēng)の塔の家 ― ヤズド、イラン」布野修司編『世界住居誌』昭和堂、2005年、186-187頁(yè)


