地域活性化には中長期的なマーケティング戦略が必要

地域を活性化するためには、中長期に亙っての地域開発戦略が必要なことはよく言われることです。そして、その手法は一般的にビジネスで用いられるマーケティング戦略と同じです。まず、地域の魅力を訴求する相手は組織なのか個(gè)人なのか、地域內(nèi)なのか地域外なのか、または國內(nèi)なのか國外なのかといった市場を明確にします。次に、活用できる地域資源は何か、有形物か無形物か、産業(yè)資源なのか観光資源なのか、消費(fèi)財(cái)か生産財(cái)かといった地域商材を分析し、他者と差別化可能な地域商品として組み立てます。更に、地域開発によって期待できる波及効果を割り出し、地域開発の規(guī)模を定めます。最後に、市場に対して地域商品を訴求するプロモーション施策を策定し実施します。また、地域開発は中長期戦略となりますので、年単位での達(dá)成目標(biāo)を設(shè)定し、いわゆるPDCAによって効果測定を?qū)g施しながら計(jì)畫の修正や見直すことで、持続可能な地域開発を継続し、地域の活性化を目指します。
こう書くとあたりまえのことばかりですが、実際のところゼロからの地域開発は、つくば市の學(xué)園都市構(gòu)想、橫浜市のみなとみらい都市構(gòu)想、富山市のコンパクトシティ構(gòu)想などを見ても分かる通り、その成否の見極めには數(shù)十年の歳月を要しますし、様々な時(shí)代の変化や開発に対する批判などを乗り越え、計(jì)畫の修正を繰り返しながら推進(jìn)していくものです。新規(guī)ビジネスのインキュベーションと同様に、生みの苦しみは想像に難くありません。

観光地では、いかに滯在してもらうか

そこで一般的には、地域に現(xiàn)在ある観光資源や産品などを再発掘、再開発して、他地域との差別化を図ることで地域を活性化する手法がとられることが多くなります。例えば、歴史的建造物や庭園などのライトアップ、伝統(tǒng)的なお祭りの組織的大規(guī)模化、地域名産品のブランド化、地域観光地ツアーの開発などが挙げられます。
特に観光地においては、地域に対する経済的効果を最大化するために、滯在型による観光を目指し、宿初施設(shè)の充実化を図る傾向にあります。

戦略としての「泊食分離」

日本における旅館は、古くからある旅籠に由來します。旅籠とは、馬を休息させる設(shè)備を備えた宿泊施設(shè)でしたが、人々の移動が増加していった江戸時(shí)代後期には、旅人に食事を合わせて提供する形式になったと言われています。「一泊二食付〇○円」というパッケージ料金は、その頃に始まったようです。また、多人數(shù)でも泊まれるような大部屋形態(tài)で、部屋食を基本とするのも、その當(dāng)時(shí)から引き継がれている様式でしょう。しかし現(xiàn)在の生活様式では、西洋式のいわゆるホテルの個(gè)室形態(tài)／食事別といった様式が好まれ、旅館の経営が難しくなっています。その解決策として提唱されているのが「泊食分離」の考え方です。

「泊食分離」で収益拡大

この「泊食分離」には、二つの意味があります。 一つは、「一泊二食付」のパッケージ料金をドンブリで管理するのではなく、宿泊と食事のコストを正確に分離、把握して、それぞれの収益性を確保する価格の設(shè)定を行い、生産性を向上させるという経営管理手法です。そしてもう一つは、泊食のパッケージ料金を止めて、食事と宿泊を分離した価格設(shè)定を行い、商品を分離するという意味です。
そもそも「泊食分離」は、前者を推進(jìn)する考え方であったと思われますが、派生的に後者の経営形態(tài)を生み、これが地域の活性化に大きく貢獻(xiàn)していると考えられます。
例えば、とある旅館では「泊食分離」を進(jìn)める過程で、宿泊客以外の會食需要の開発に至り、現(xiàn)在では食事を中心とした経営に転換、さらに大部屋を會食場所として提供することで施設(shè)稼働率を向上させ、収益率を大きく改善させています。このことは結(jié)果的に、地域外に流出していた顧客のみならず、地域外の顧客を地域內(nèi)に呼び込む効果が生んでいます。
また、ある溫泉旅館では、宿泊施設(shè)を和風(fēng)ホテルのように改築し、施設(shè)內(nèi)外に地域の産品を使った和洋食レストランを複數(shù)展開、宿泊客に地域內(nèi)の回遊を誘導(dǎo)する経営に転換しています。そうすることで、來客に地域內(nèi)の多様な魅力を発見してもらい、地域へのリピーターを増やす効果を狙っています。

溫泉観光地の外湯めぐりは地域活性化への先人の戦略

兵庫県の城崎溫泉は、およそ1300年の歴史を誇り、多くの文人墨客が訪れたことでも有名な溫泉観光地です。城崎溫泉の特徴は、大小7つの「外湯めぐり」。大谿（おおたに）川沿いの柳並木に沿って、観光客が浴衣姿で外湯をめぐって闊歩するノスタルジックな風(fēng)情は、ここでしか味わえないでしょう。しかし、その城崎溫泉の「外湯めぐり」にも危機(jī)の時(shí)代がありました。昭和初期に三木屋旅館が敷地內(nèi)の泉源を利用して城崎初の內(nèi)湯を新築の旅館內(nèi)に設(shè)置したところ、溫泉地の伝統(tǒng)を壊すものとして訴訟事件が勃発しました。この爭いは20年以上も続きましたが、最終的には和解し、旅館內(nèi)の內(nèi)湯を認(rèn)める代わりに內(nèi)湯の規(guī)模を制限するとともに、泉源を行政が一括管理、溫泉の配湯設(shè)備を整備しました。この和解が無ければ、きっと地域內(nèi)競合を招き、中小規(guī)模な旅館は生き殘れなかったかも知れません。そうなれば、今の城崎の風(fēng)情は大きく変わっていたことでしょう。この和解は、旅館の利権を認(rèn)めつつ地域の利益を守る、先人の戦略（知恵）だったのではないでしょうか。

地域の活性化には、地域開発戦略が求められますが、ともすれば地域と個(gè)人、個(gè)人間の利権の調(diào)整が困難な場合があります。そんな時(shí)に、歴史的な先人の知恵を紐解くことも大切なことです。